あらすじ
1985年、食品卸売会社横浜支店に勤務する周東譲はアルバイトで入ってきた吉川敦子と付き合い、やがて相思相愛になる。しかし、敦子には譲には話していない秘密があった。会社の目には見えない圧力に屈服させられ、譲は敦子と別れる決意をする。クリスマスを迎える土曜日、最後のデートに選んだ場所は譲の大学だった。大学キャンパスには、イルミネーションに飾られた巨大ツリーがあった。敦子と破局した譲はコネ入社が幅を利かせる会社に居るのが馬鹿らしくなり、会社の将来に見切りをつけて国家資格の中小企業診断士を目指す。しかし、仕事をしながら資格を取得するのは容易なことではなかった。身も心もボロボロになり二度も会社を辞めて資格を取得した時、譲は31歳になっていた。その後、コンサルティングファームで経験を積んで譲はコンサルタントとして独立した。ちょうどその頃、譲はかつて会社の同僚たちの今を知って愕然とする。そんなある日、譲はタンスの抽斗の奥から偶然、敦子から贈られた一枚のハンカチを見つける。それはもはやハンカチとはいえぬただの布切れだった。譲はそのハンカチを持って、熱海に向かった。熱海港から初島行の船に乗り、太平洋に出ると熱海の街がミニチュアのようにみえた。譲は今こそ、敦子への気持ちを整理することができると思いながら、海に向けてハンカチを投げ入れた。