あらすじ
喜恵為真(きえなま)市が一般に抱かれている印象は、大凡この言葉に集約されるだろう。『近年において自殺件数がゼロの市』という、メディアでも取り上げられるこの言葉に。
しかし、もし更にその詳細を調べた者がいたなら、こう言うだろう。『世界有数の自殺未遂率の市』と。
この市は、人口に比して自殺未遂の件数が異常に多い。他の市においては、自殺未遂と自殺の比率を足し合わせても、この市に届く所は中々存在しないだろう。
では何故自殺を試みる者が多いこの市で、近年成功がただの一度も報告されていないのか。
——もし彼らが存在しなければ、その多くは成功し、『世界有数の自殺率の市』になっていたに違い無い。
自殺相談センター。それ自体はこのストレス社会において、ありふれた行政サービスだ。重要なのは、これの特務部である。
センターの組織図には記載されていないこの特務部は、どうしても知らずにはいられないセンター全体の長、喜恵為真市長やその他上層の人間、つまり現地の人と偉い人のみが存在を知っている。
何故そのような、軍の特殊部隊じみた秘匿がなされているかを言えば、様々な必要に応じて、と言うのが妥当だろう。
何故なら、特務部が行うのは、自殺願望を抱く者に自殺を実行させる怪人、スーサイダーの対処だからだ。
その由来、正体、性質……。謎の多い存在であり、世間には認知させるべきではないと判断されたが、根絶の方法も有効な利用手段も確立されていない。
そんな中でも、人類はどうにかこれに対処していた。
喜恵為真市の明日は、正義のヒーロー、ディオヴロフトに委ねられている。
この物語は、自殺を誘発・助長・ほう助するものではありません。