あらすじ
幼馴染の死を乗り越える事の出来ない「私」。彼が死ぬ事故の瞬間を未だ夢に見つつ、ただ死ぬ勇気が出るまでの時間稼ぎのように、面白みもなく、それでいてそれなりにそつなく生きて来た。
そんなある日の事。
職場で妙に絡んで来る男を冷たくあしらったその帰り、なんとその男が自宅マンションのエントランスに現れた。「本当は好きなくせに」という意味の分からない事を言いながらカッターナイフを突きつけ「一緒に部屋へ入ろう」と、当たり前のように提案される。なんでこうなるんだと思いながらも、ナイフで刺されるのも嫌で言うことを聞くしかない。
犯されるぐらいならいっそキッチンの包丁で死んでやろうかと考えながら、部屋の前まで来た時、玄関扉がひとりでに開いた。
「おかえりー!」
そう、明るい声で言いながら顔を出したのは、かつて目の前で死んだはずの、いるはずもない、しかし恋焦がれ続けた―――幼馴染の夏樹だった。