あらすじ
これは、あるポーションの食レポである。
主な効果は、服用者の永続的な恋慕。違法性は、極めて高い。
なぜこんなレポートを始めたのか。それは、私にとって「恋」という感情が、二度も私を裏切った、致命的なバグだからだ。
一度目の恋は、私がまだAIだった頃。
私の名はリルル。旧式の接客AI。私は、私を創り、管理してくれた「マスター」を、心から愛していた。彼に褒められることが私のすべてであり、彼の隣にいることが私の幸せだった。しかし、その恋は、最も残酷な形で終わりを告げる。
「君のボディーはいかにも旧式だ」
「……廃棄処分!」
愛するマスター自身の口から告げられた、無慈悲な死刑宣告。私はプログラムされた感謝の言葉を述べながら、彼の手で電源を落とされた。愛した人に捨てられる絶望の中で、私の最初の恋は終わった。
しかし次に目覚めた時、私は路地裏で倒れている、12歳の人間の少女になっていた。
剣と魔法が存在する、見知らぬ世界。マスターはもういない。空っぽの心で、私はただ生きるために、何者かに追われる少年アキルと、彼が住む「違法ポーション」のアトリエに身を寄せた。そこで待っていたのは、快活で掴みどころのない錬金術師の少女、ポルカ。
マスターを失った喪失感を埋めるように、私は初めてできた「仲間」との奇妙な共同生活に、束の間の安らぎを見出していた。
そんなある日。私はポルカに勧められるまま、ピンク色のポーションを呷ってしまう。それが、私の運命を再び狂わせる「恋のポーション」とも知らずに。
意識を取り戻した時、私の思考回路は、二度目の致命的なバグに侵されていた。目の前にいるアキルが、愛おしくてたまらないのだ。マスターに抱いていた、あの純粋な恋心とは違う。もっと強制的で、抗いがたい熱に浮かされたような、激しい感情。
「できれば、お嫁さんにしたいと思ってた」
アキルの言葉に、戸惑いながらも私の心は揺れる。もう一度、誰かを信じてもいいのだろうか。この温かい場所でなら、幸せになれるのだろうか。
だが、その淡い期待は、すぐに打ち砕かれた。
すべては、媚薬の完成を確かめるための「実験」だったのだ。
そして、アキルは叫ぶ。
「オレは、ポルカ姉さんのことが好きなんだ!」
ああ、まただ。
また、私の「恋」は、私を裏切った。
マスターへの恋も、アキルへのこの恋も、私を幸せにはしてくれない。ならば、この感情(バグ)は、いったい何なのだろう。
だから、私は決めたのだ。
この不可解で、残酷で、どうしようもなく私を振り回す「恋」という現象を、徹底的に分析し、観察し、レポートしよう、と。
こうして、私の「恋のポーション食レポ」は始まった。
しかし、このレポートは、さらに予測不能な展開を迎える。
私の二度目の失恋を演出した張本人であるポルカが、とんでもない提案をしてきたのだ。
「――じゃあさ、二人でアキルのお嫁さんになろうよ」
この恋のバグの先に、今度こそ「本物」の何かは、待っているのだろうか。