あらすじ
物語紹介文
満たされない毎日を送る、三十五歳のわたし。ある日の夕暮れ、公園でひとり泣いている幼い男の子を見つける。
「ママやパパは?」
親切心からの問いかけが、すべての始まりだった。
迷子だと思い、交番へ連れて行こうとした、その時。男の子はわたしにしがみつき、叫んだのだ。「まま!」と。
その一言で、わたしは“親切な女性”から“誘拐犯”へと変わってしまった。
罪の意識に苛まれながらも、生まれて初めて知る「必要とされる幸福」。『ゆうくん』と名付けたその子との偽りの生活は、何物にも代えがたい宝物になっていく。
しかし、束の間の平穏は長くは続かない。
我が子を邪魔者扱いしていたはずの「実の母親」が、世間の同情を武器に執拗な追跡を開始する。警察の捜査網が、じりじりと二人を追い詰めていく。そして、私の罪を知りながら、嘘で私たちを守ろうとする「共犯者」の実母。
血の繋がりか、それとも過ごした時間か。
本当の母親は、どちらなのか。
逃避行の果てに、彼女が下した魂の決断とは――。
母性の本質を問い、読む者の心を激しく揺さぶる、慟哭のヒューマン・サスペンス。