あらすじ
「あなたのセリフなら言えるのに、本当の私の言葉は何も出てこない」
演じることでしか愛せない沙耶と、創作の中でしか恋を知らない私。
水槽越しに始まった私たちの恋は、台本にない未来を描けるだろうか。
小説家のひかりは、アクアショップで、店員の沙耶に出会う。沙耶は、奇しくもひかりが執筆中の小説に登場させたキャラクターそのものの女性だった。ひかりは沙耶に一目で心を奪われる。
ひょんなトラブルから沙耶に助けられ、急速に距離を縮めた二人。沙耶が劇団員であり、ひかりの作品の熱狂的なファンであることが判明し、二人の関係は「作者」と「ファン」という特別なものになる。しかし、役に入り込むと現実との境界が曖昧になる沙耶の癖が、二人の関係を複雑にかき乱していく。
演技と本音、創作と現実が絡み合う中で、求め合い、すれ違い、傷つけ合う二人。孤独に耐えきれなくなったひかりは、自分の「脚本」で沙耶を繋ぎ止めようとするが、その関係は歪な支配へと変わっていく。
これは、自分の物語の世界に閉じこもっていた小説家と、演技の仮面なしでは人と向き合えなかった女優が、脚本のない現実の中で本当の愛を見つけ出すまでの、歪で切ないラブストーリー。