あらすじ

冷たい風が頬をかすめるたび、私はふと君を思い出す。

駅前のイルミネーションがきらきらと輝いている。手袋越しに握ったスマホには、君の最後のメッセージが表示されていた。「春になったら、もう一度話せるかな?」その一言に私は、どう返事をしたらいいかわからず、ただ既読をつけたまま日々を過ごしている。

君と出会ったのは、一年前のちょうど今頃だった。大学のサークルでクリスマス会を開くことになり、誰もが気の合う友達同士で集まる中、ぽつんと一人でいる私に、君は声をかけてくれた。
「寒いね。でも、手が冷たいのは僕だけかな?」
突拍子もないその言葉に驚いたけれど、君の笑顔は不思議と温かくて、私はいつの間にか自然に笑い返していた。

それから私たちは、寒い日も雨の日も、一緒に過ごすようになった。君の話す未来の夢や、好きな音楽、見たい映画。いつも何かしら話題が尽きなかった。でも、春が近づくころ、君の表情がどこか曇るようになった。

「もし、僕がいなくなったら…どうする?」
そんな問いかけに、私は冗談だと思って「探しに行くよ」と笑って答えた。でも、君は笑わなかった。ただ、寂しそうに目を伏せて、静かにうなずいただけだった。

君が東京の大きな病院に入院していることを知ったのは、それからしばらくしてからだった。君はずっと隠していた。見舞いに行ったとき、君は小さな声で言った。「春になったら、元気になって戻れると思う。でも、もし僕が戻れなかったら、君は新しい春を探してほしい」

私は泣きながら首を振った。そんな未来なんて考えたくなかった。だけど、君の優しさは、私を前に進ませようとしていたのだと気づいたのは、君がいなくなってからだった。

君が残してくれたメッセージ。「春になったら、もう一度話せるかな?」という言葉の意味。君はきっと、私が新しい季節を見つけるのを待っているんだと思う。

駅のホームに風が吹き抜ける。その冷たさに少しだけ目を閉じてから、私はスマホをしまい、電車に乗った。君の好きだった青い空が、私の心にも広がっている。

「ありがとう。また、どこかで会おうね」
そう心の中でつぶやきながら、私はそっと笑った。

そして電車は、春の予感を連れて走り出した。

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アルファポリス
アルファポリス2025/01/23
  • 現在の作品冬空に浮かぶ君