あらすじ

2030年、日本。平穏な日常が、突如として次元の彼方へと消し去られた。 事の発端は、鹿児島市の中心部が、まるで巨大な口に食い荒らされたかのように、ぽっかりと虚空に穴を開けて消失した未曽有の事件。JAXC(日本宇宙極点観測センター)本部の地下深くに設けられた、厳重に閉ざされた総務課文書管理室――今や臨時解析探索室と化したその場所で、若き科学者・昴は、疲弊しきった宇宙学博士・梶原からの、戦慄すべきブリーフィングを受けていた。 ディスプレイに映し出されるのは、理解不能な、歪んだ現実の断片。 消失区域内部では、時間の流れが完全に崩壊し、通常の24時間サイクルは意味を成さない。15桁の時計装置が示すのは、地球の自転公転とは異なる、何らかの異質な周期。特定のエリアでは、人体に致命的な最大10Gにも及ぶ磁場崩壊が不規則に発生し、いかなる調査も阻む。衛星画像に映る街の姿は、まるでそこに存在するかのような欺瞞的なミラーリング効果に過ぎず、物質としての実態は皆無。そして、最も不可解なのは、三つの恒星によって51日に一度しか夜が訪れないという、異様な光のサイクル。そこには鹿児島市民の生命反応は一切見受けられないにもかかわらず、時に誰かが調理し、機器を操作しているかのような微弱な波動が感知される。 梶原博士は、膨大なデータを前にして「既知の物理法則では説明がつかない。手詰まりだ」と嘆く。昴もまた、その現象を引用すべき「あらゆる文献が存在しない」ことに、科学者としての限界と焦燥を感じていた。 やがて、政府からの介入が始まる。 鹿児島市消失区域に設営されたJAXC臨時現地対策本部に、仕立ての良いスーツに身を包んだ男――内閣調査室公開交渉課課長・矢壁が姿を現す。彼は、にこやかな笑顔の裏に底知れない狡猾さを秘め、政府を代表して「幹事役」として調整に当たると告げる。矢壁は、情報収集はJAXCに任せつつも、この未曽有の事態における国民への「説明の調整」、そして「情報の統制と印象操作」を主要な任務としていることを暗に示唆する。 昴は、矢壁が「潤沢な予算を投入する」「どんな『手』も打つつもりだ」と語る言葉の裏に、国家の「機密費」が惜しみなく使われていることを察知し、その露骨なやり方に不快感を覚える。しかし、矢壁は涼しい顔で、内閣調査室の予算は公開されているとしつつも、「内閣官房報償費」のような使途非公開の「機動的な経費」の存在を匂わせる。彼は、この超越的な現象を、国家の栄達のために密かに利用しようと企んでいるのだ。 この鹿児島市消失という未曾有の事態は、単なる科学現象ではなく、国家の深部に根ざした秘密と、人間の情動が織りなす壮大な物語の序章に過ぎないことを、昴はまだ知らない。 * "Sci-Fi novel Japan" * "Parallel universe story" * "Conspiracy thriller" * "Reality bending" * "Secret organization" * "Human emotion power"

連載情報

ウェブ小説

配信言語
カクヨム
カクヨム2025/06/22
  • 現在の作品Transmission