あらすじ

ーー1000年後、彼は“ただの教師”として、静かに生きていた。

魔導学院の朝は、鐘の音と共に始まる。
学生たちのざわめき、風に揺れる旗、空を舞う鳥たち――今日も世界は平和だ。

そんな学院の一角、静かな教師控室の奥。
整然と積まれた書物の山の中、一人の青年が眠たげに紅茶をすする。

彼の名は、ノエル=アーケイン。
魔導学院の教師。人形のように整った中性的な顔立ちと、常に感情を読ませぬ無表情。
ただの無気力教師――そう見えるだろう。

だが彼の正体は、かつて世界にその名を轟かせた【千年前の賢者】。
さらにその前世は、“極道”という異世界の裏社会に君臨した存在だった。

「……相変わらず、無駄に賑やかな場所だ」

カップを置きながら、ノエルは小さく息をつく。
学院内では自分の姿を魔法でごく普通の青年に見せている。エルフの長命種であることも、賢者だったことも、誰も知らない。知られる気も、なかった。

――関わりは、いずれ別れを生む。
それを知っているからこそ、距離を保ち、無関心を装う。

ただし。

(……あれだけ騒がしいのに、また一人で決着つけようとしてるな。バカが)

ノエルの視線が、窓の外にちらりと向く。
学院の訓練場で、ひとりの青年が模擬戦を行っている。
剣士科の主席、カイ=ルグラン。素直で努力家、面倒見がよく、教師たちの間でも評判の良い生徒。

そしてなぜか、ノエルにだけ懐いていた。

(……ああ、もう)

椅子を押しのけて立ち上がると、ノエルはゆっくりと歩き出す。
窓の外、カイの背中が剣を振るうたびに、かつての己の弟子たちの影がよぎる。

1000年の孤独が染みついたノエルの心に、また一人、入り込もうとしている――。

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アルファポリス
アルファポリス2025/05/07
  • 現在の作品永遠の彼方に