あらすじ

もし、あなたの“運命の始まり”を、相手が全く覚えていなかったとしたら──?
誰にでも優しくクラスの中心にいる夏川陽翔(なつかわ はると)と、明るく成績優秀で皆から好かれる白石紬(しらいし つむぎ)。誰もが羨む人気者同士の二人は、いつも笑顔で言葉を交わす、仲の良い友達。しかしその胸の内には、お互いへの密かな想いが隠されていた。
紬にとって陽翔は、高校入学式の雨の日、不安で立ち尽くす自分を助けてくれた、王子様のような特別な存在。その日から、彼女の初恋は始まった。けれど、当の陽翔は、その運命の出来事を「全く覚えていない」と屈託なく笑う。その一言が、二人の間に見えない壁を作り、甘く切ない“両片思い”の日々が始まる。
そんな二人の心をかき乱すように、強力な恋のライバルが現れる。サッカー部のエースで、自信に満ちたストレートな愛情表現で紬に迫る藤堂玲矢(とうどう れいや)。そして、陽翔の表面的な人気ではなく、彼の内面に秘められた優しさを見抜き、ミステリアスに近づく令嬢・西園寺莉緒(さいおんじ りお)。四人の視線が交錯する時、衝動的な「恋」は、嫉妬や誤解、すれ違いを巻き起こし、彼らを激しく揺さぶっていく。
本作の魅力は、その緻密で詩的な情景描写にある。季節の移ろい、教室に差し込む西日の光、廊下に響く足音、風が運ぶ花の香り──。五感を刺激する美しい風景が、登場人物たちの心の揺らめきと繊細にシンクロし、物語世界へと深く没入させてくれる。
これは単なる恋愛物語ではない。文化祭、夏祭り、そして運命の修学旅行。数々の出来事を通して、自分の気持ちからも相手の気持ちからも逃げていた主人公たちが、傷つき、悩みながらも、本当の自分と向き合っていく。そして、ただ「欲しい」と願う自己中心的な『恋』が、相手の幸せを心から願い、その存在そのものを愛おしむ、かけがえのない『愛』へと昇華していくまでの、魂の成長の記録だ。
青春時代の、あの息が詰まるような切なさをもう一度味わいたいあなたへ。人を本気で好きになることの喜びと痛みを、思い出したいあなたへ。涙なしには読めないけれど、読み終えた後には、温かい光が心に灯る。そんな感動の結末を、ぜひその目で見届けてほしい。

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アルファポリス
アルファポリス2025/06/15
  • 現在の作品思い出せない恋のつづき