あらすじ
高橋健人、三十一歳。文房具メーカーに勤める、ごく普通のサラリーマン。彼の心は、上司に「ヘチマ」と揶揄されるほど、日々の理不尽に吸い尽くされ、スッカスカに乾ききっていた。パワハラ部長からの無茶振り、要領のいい後輩への嫉妬、届かぬ恋心、そして終わらない残業……。世界は梅雨空のようにジメジメと重く、人生は「ままならない」ことばかりだ。
そんな彼の元に、絶望的なミッションが下される。「この企画、明日の朝までにゼロからやり直せ」。途方に暮れ、誰もいない深夜のオフィスで孤独な戦いを強いられる健人。そこに現れたのは、清掃ワゴンの音とともにやってくる、神出鬼没の清掃員・天童ハルさんだった。
年齢不詳、予測不能。彼女は健人の悩みを一瞥するなり、おもむろにモップをギターのようにかき鳴らし、魂のロックを歌い出す!
これは、風変わりな清掃員探偵ハルさんと、悩めるヘチマ男・健人が繰り広げる、前代未聞の「お悩み解決」ドタバタコメディ。彼女の武器は、科学的な推理でも、動かぬ証拠でもない。床にこびりついたガムを剥がすヘラと、物事の「本質」を射抜く、深く、温かい言葉だけ。
「問題ってのは、力ずくで剥がしちゃダメなんだよ。変えられるのは、いつだって、その小さな隙間に対する、自分のヘラの『角度』だけさ」
電車で読めば最後、吹き出すこと間違いなし。なのに、なぜか胸の奥が熱くなり、明日が少しだけ楽しみになる。
怒りの正体、消えない不安、人間関係のモヤモヤ。その全ての原因は、実は自分自身の「思い込み」という名の“汚れ”だった? 専門用語は一切なし。笑って泣いているうちに、こびりついて取れなかった悩みが、スルリと剥がれていく。これは、あなたのための「心の取扱説明書」です。
ベトつく世界を、少しだけ軽やかに歩いてみませんか?