あらすじ
※『小説家になろう』様と、同時掲載中です。
勇者と魔王が争う歴史が繰り返される世界。
その何代目かとなる、『処刑勇者』と呼ばれる勇者が、何故か聖女や賢者もなく、一人で荒れ地をさまよっていた。
そこで襲撃をかけた魔王軍の竜将軍、ジェネスに『俺を殺してくれないか』と彼は告げる。
ジェネスに勇者が語ったのは、『勇者』とは、名前を取り上げられた存在に強制的に押し付けられるおぞましい役割とのことだった。
そんな彼に、魔王が『ブレイズ』という名を与えることで、青年は勇者から解放されるーだが、彼には『ブレイズ』以前のものは、何も残らなかった。
その彼の主治医となったのが、エニグマ族構文外科医、グレン。
「-君の中はからっぽだ。だったら、俺が定義してあげる」
グレンは『構文欠損症』という、存在の一部が欠けてしまっている病を持っていた。
存在をまとめあげていた『勇者』という定義を失って不安定だったブレイズは、その定義に巣くうことで、欠損を埋める最適な『家』だったのだ。
『勇者』という定義をとりあげられ、不安定になっている青年を安定させるために、グレンは『恋』という疑似コードをブレイズに刷り込んで寄生する。
宿主となったブレイズは何の違和感もなく『好き』という気持ちをグレンに抱く。
だが、グレンは言う。
「俺がやっているのは愛の擬態だよ。愛が存在の肯定する要素なら、俺はその愛情ってところに愛情のふりをして胡坐をかいている寄生体だ。-お前は、俺の『愛情の家』だよ、ブレイズ」
「愛っていうシニフィエがあいまいな言葉は嫌いだよ。愛とやらが存在を肯定するものなら、それは機能として十分果たせるものだ。ーだから、俺がやっているのは『愛の擬態』。
「愛がすべてを許しても俺はお前を許さないよ、ブレイズ。絶対に許さない。これは罪とかそういう意味じゃない」
潔癖なまでに『愛』という言葉を嫌うグレン。
機能という形で『愛』を模して寄生体はブレイズを支配していく。
ブレイズもまた抗えずに惹かれていき、2人は共依存の関係に陥っていく。