あらすじ
ある町で、少年は夢の中に“燃える火山”を見始める。
それは単なる風景ではなく、誰かが名を呼び、届かぬまま消えていく記憶が渦巻く場所だった。
そんな彼と、同じ夢を見ている少女・月森しおりが出会い、ふたりは夢を通して過去の忘却と記憶の断片を拾い集めていく。
しおりは幼き日に、名もなき“火神の子”に出会い、「ひかげ」と名付けたが、彼の記憶を封じていた。
少年こそ、その“忘れられた名”であったことが徐々に明かされる。
やがて夢と現実の境が崩れ、神話の継承者・神主の烏丸斎が現れ、祭を通して町に眠る記憶の風を呼び起こす。
しおりが再び「ひかげ」の名を呼ぶことで、少年は自身の存在を取り戻し、ふたりは記憶の灯火を分かち合う。
そして町の風は、忘れられた声たちを語り始める。
灯火は文化となり、語り継がれずにいた記憶は風音祭で祓われ、祓詞(はらいことば)として残る。
物語の終盤では、風の中に生まれた少女灯(あかり)が登場し、語られなかった記憶を拾い集め、
“名のない記憶”を新たな物語として他者へと手渡していく。
最後に、町を訪れた青年が灯の語りを聞き、「これは、自分の物語かもしれない」と涙を流す――
こうして灯火は、誰かの胸の内でふたたび揺れ始める。