あらすじ
岐阜の古い町並みに暮らす姉妹、ミチルとサキ。内気で自分の容姿にコンプレックスを抱える姉・ミチルは、笑う口元を隠すために白いマスクが手放せない。部屋の隅には、父親が残した埃をかぶったアコーディオンが静かに佇んでいる。それは、ミチルが唯一心安らげる、温かい音色を奏でる場所だった。
一方、妹のサキは、努力せずとも人を惹きつける天性の明るさと歌声を持っていた。その笑顔はミチルにとって憧れであると同時に、深い劣等感の源でもあった。親からの何気ない「サキは笑い顔が可愛くて良いね」という言葉が、ミチルの心を深く抉る。
「サキみたいに愛されたい」。自己否定の念から、ミチルは魔法のようなSNSアプリ「Aetheria」に居場所を求める。フィルターで加工された地味な顔は、瞬く間に「いいね!」を量産する美貌へと変わる。虚構の自分に酔いしれ、次第にSNSの奴隷と化していくミチル。埃をかぶったアコーディオンは忘れ去られ、鏡に映る本当の自分を嫌悪する日々。心配する妹サキの言葉も、親の忠告も、ミチルの耳には届かない。
しかし、SNSで推奨した危険なダイエット錠剤による健康被害が発覚し、ミチルは炎上騒動で全てを失う。入院を余儀なくされ、絶望の淵に立たされた彼女のもとに、妹がそっとアコーディオンを置いていく。「下手でもいい。練習しないとうまくならないんでしょ?」。その言葉に震える指でアコーディオンを抱えたミチルは、温かい音色が虚構の「いいね」とは違う、本当の自分の音であることに気づく。
退院後、ミチルとサキは、ありのままの姿で再び音楽を奏で始める。下手でも、不器用でも、二人の奏でるハーモニーは、SNSの虚像では決して得られなかった温かい共感を生み出していく。
これは、コンプレックスを抱えた少女が、虚構の自分を捨て、音楽と妹の愛によって本当の自分を取り戻す再生の物語。ミチルが最後に外した白いマスクの下には、虚構ではない、心からの笑顔があった。