あらすじ
彼の一言で始まった関係は、恋ではなく、混ぜられることだった。
何も知らずに頷いたあの日から、彼女は自分の形を失くしていった。
人を好きになること。
自分を差し出すこと。
それが「愛」だと信じていた。
でも、生理が来ないことに気づいたとき、彼女は自分の中に誰かがいることを知る。
検査薬の陽性反応、無関心な彼、遠ざかる選択肢。
頼った医療機関にも拒まれ、彼女はひとり、白いカーテンの向こう側へ進む。
杏仁豆腐のように、見た目だけ甘くて、内側の苦さに吐き気がした。
その後に残ったのは、なかったことにされた命と、身体にまとわりつくカビのような後悔。
母の沈黙の抱擁。父の目の奥の濁り。
警察、検察官、誰かが“彼”を裁いてくれたとしても、彼女の痛みが消えることはなかった。
何度洗っても落ちない記憶。
剥がれない羞恥。
それでも、彼女はひとつずつ、自分の輪郭を確かめていく。
この物語は、傷つきながらも言葉を紡いでいく少女の、再生の記録。
混ぜられ、焼かれ、捨てられた心が、それでも歩き出そうとする、
「壊れてしまった手順を、一つずつ確かめる」 物語。