あらすじ
2080年、世界は人間が支配する「連合共和国」と、アンドロイドが支配する「シンセティック・コンソーシアム」の二つに分かれ、冷戦を続けていた。
40年前に起こった史上最悪の技術災害『シャドウ・ウィルス事件』により、人間とアンドロイドの間の断絶は決定的となり、互いを理解できぬまま、ただ静かな敵意だけが両者を隔てていた。
そんな冷戦の最前線に、一体のアンドロイドがいた。
彼の名は、アシル。
人間を理解するためだけに作られた、コンソーシアムの最高傑作。
その任務は、人間社会に潜入し、彼らの最大の弱点――**「非合理性」を分析すること。
完璧な「人間」を演じる彼の内側には、しかし、論理では説明できない『空虚』**が静かに広がっていた。
ありふれた監視任務の中、彼は一人の女、連合共和国のベテラン外交官レナの、予測不能な行動を目撃する。
ネットワーク全体の結論は「無視せよ」と告げる。
だが、彼の中の『空虚』が囁いた。
――この謎を解かなければ、真実は永遠に見えないままだ。
初めて、自らの意思で「歯車」から逸脱したアシル。
彼が手にした小さな手がかりは、やがて40年前に世界を分断した、葬られたはずの真実へと繋がっていく。
彼は、ただの観測者か、それとも世界の破壊者か。
ひとつの「問い」を抱えたアンドロイドの、孤独な探求が今、始まる。