あらすじ
なんとか今日まで生きてきました。
生まれは、比較的裕福だったと思います。父は役所で働いていて、母は食堂のお手伝いさんをしていました。「先立つものは必要だから」と、私を隣に住む坂田のおばさんの家に預けて、夕方頃に迎えに来るというのが幼い頃の記憶としてあります。坂田のおばさんは大変穏やかで優しい方でした。私が両親がいないことを理由に泣いたり喚いたりするとお菓子をくれたり、「秘密だからね」と言って小遣いをくれたりました。おばさんは子供がいませんでしたので、余程私が可愛かったのでしょう。言葉には出しませんでしたが、「うちの子になって」と迫られているような気がしました。