あらすじ
目覚めた場所は、知らない寝室だった。
豪奢なベッド、甘い石鹸の香り、そして――涙ぐむ美しい許嫁。
「殿下……ご無事で……」
自分の名前も過去も思い出せないまま、ただ“殿下”と呼ばれる。
許嫁を名乗る貴族令嬢。忠義を誓う女騎士。スープが得意な使用人。信仰深い祈祷師。そして、冷静な教育係。
彼女たちは、口をそろえて言う。
「どうか、記憶を無理に思い出さないでください」
甘く満ち足りたこの空間は、果たして“癒し”か、それとも“檻”か。
俺は、何を忘れている?
――そして。
彼女たちは、いったい……誰なんだ?