あらすじ
嘘で守られた日々が
ひび割れるように終わろうとしていた夜。
風が軒先をなぞり
遠くで鳥の羽音が散った。
静まり返った小道を
重たい足音がゆっくりと踏みしめてくる。
家の灯りがかすかに揺れ
扉がきしむ音が胸を打つ。
その瞬間
世界がゆるやかに歪んだ。
視線が交わる。
そこに言葉はなく
ただ互いの存在だけが強く焼きついた。
夜の匂い
雨上がりの湿り……遠い鐘の音。
胸の奥で誰にも触れられなかった何かが
ひそやかに脈を打つ。
夜明けを知らない少女と
光を信じない青年。
閉ざされた場所で
ふたつの瞳は
まだ名前を持たない明日を
そっと、そっと、夢見ていた。