あらすじ
京都の由緒正しき私立高校、洛北祥雲学園。
小学校から大学までの完全エスカレーター式の学校だ。
この学園は、生徒たちの間で、目に見えない序列(カースト)――通称**『教室リーグ』**によって、残酷なまでに支配されている。
中学から奨学金で入学した“外部生”の俺、**音無奏(おとなし そう)**は、自らを「観客席」と規定し、誰にも関わらず、ただ、この愚かで美しいゲームを“観察”するだけの、空気のような日々を送っていた。
中学時代に犯した、たった一つの「罪」。その記憶に蓋をし、二度と誰かの、そして自分自身の期待を裏切らないために、息を殺して、卒業の日を待つ。それが、俺の生存戦略だった。
――あの日、担任教師の、偽善に満ちた一言が、引き金になるまでは。
俺の眼に、突如として宿った、人の心の力学を視覚化する異能**〈観識(かんしき)〉**。
まるで、ゲームの攻略サイトのように、人の嘘、本音、力関係を暴き出す“階級分析スカウター”。それは、俺を「観客」から、リーグを根底から覆す「プレイヤー」へと、強制的に引きずり出した。
立ちはだかるのは、学園に君臨する二人の“王”。
完璧な善性で、全ての生徒の太陽である、無冠の絶対王者・天宮蓮司(あまみや れんじ)。
その隣で、噂と“空気”を支配する、冷徹な女王・久条亜里沙(くじょう ありさ)。
そして、俺の最強の武器であるはずの〈観識〉が、なぜか、唯一通用しない、謎めいた少女・白瀬ことり(しらせ ことり)。
彼女の、全てを見透かすような静かな瞳は、俺が犯した、あの夏の日の「罪」の記憶を、容赦なく呼び覚ます。
これは、単なる下剋上の物語ではない。
頂点に立つことは、目的ではない。
偽物の力(スキル)を手にした少年が、本物(ほんもの)の絆を取り戻すため、過去の罪に立ち向かう、あまりにも遅すぎた**“贖罪”**の記録。
その戦いの果てに、俺は、一体、何を奏でることになるのか。