あらすじ
死後の世界はこんなにうるさいはずではなかった。
タチバナ・ミナミは、雲や天使、ちょっとした審判を期待していた。しかし、目を覚ますと、古びた木造の寮にいた。壁紙は剥がれ、壁は薄く、そこには「死んでいない」「半分死んでいる」「そもそも生きていなかった」と信じる三十人の奇妙な人々が住んでいた。
ここが死後の寮8号室だ。魂たちが「まだ成仏できていない」と言い張る場所。しかし、誰もその意味がよくわかっていない。ここでは、「真夜中まで絶叫禁止」「幽霊は先に風呂を使う」「壁が話しかけてきたら話さないように」といったルールが厳守されている。けれども、誰も自分の誕生日を覚えていない。
トイレットペーパーに呪われたり、クラブ活動で争ったり、料理が大失敗したり、生きている世界へ脱出しようとしたり…ミナミはなんだかんだでここが居心地よくなっていく。毎日が淡々としたリズムで過ぎていく中、奇妙な出来事、人々、そして静かな瞬間が混ざり合っている。
しかし、この寮の軋む扉と薄い笑顔の裏に隠されたひとつの疑問がある。
「なぜ、私たちはまだここにいるのか?」