あらすじ
神々とあやかしが息づく帝都の片隅で、霊力を持たない「名無し」の娘・美桜(みお)は、育ての親と営む小さな茶屋だけが世界のすべてでした。
しかし、その穏やかな日常は突如として崩れ去ります。
育ての親が人の手には負えぬ呪いに倒れ、店も立ち行かなくなった絶望の淵で、美桜の前に現れたのは、雲の上に住まうと噂される龍神一族の若き当主・龍胆(りんどう)。
人間離れした美しさを持つ彼は、冷たい瞳でこう告げます。
「一年間、我の“形代の妻”となれ。さすれば、その者の命を救ってやろう」
それは、あまりにも傲慢で、けれど唯一の救いの手でした。
偽りの祝言から始まる、冷たい契約生活。
完璧で近寄りがたい龍胆ですが、時折見せる不器用な優しさに、美桜は遠い日の記憶を重ねます。
――まさか、あなたが。幼い日に出会った、あの人なの?
けれど、彼はなにも覚えていない様子。
忘れられた約束と、決して言えない秘密を胸に秘め、偽りの妻を演じる美桜。
すれ違う二人の心と、じれったい恋の行方とは――。
切なくも心温まる、和風シンデレラストーリーが今、幕を開けます。