あらすじ
大学生の「僕」は、かつての同級生 神原澪(かんばら みお)の墓参りのため、瀬戸内の離島「篁島(たかむらじま)」を四年ぶりに訪れる。澪は転校生として島にやってきた少女で、透き通るように静かで美しい存在だった。しかし、一年も経たないうちに原因不明の病で亡くなっていた。
澪から生前に届いた、たった一通の不可解なメッセージ──「ひとくち、水が欲しい」。
その言葉が心に引っかかったまま、主人公は彼女に何も返せず、別れも言えなかった。
島に戻った彼は、澪とともに過ごした記憶の場所、そして彼女がこだわっていた井戸の水と再会する。そこから始まる、現実と幻想の境界が曖昧になる体験。澪の幻影、水にまつわる怪異、語られる“水神”の祟り──。
次第に明らかになる、一杯の水に込められた澪の想いと、「忘れられること」への恐れ。
すべてを知った主人公は、澪の魂を静かに見送り、再び生きていく決意を胸に、島を後にする。