あらすじ
景司は静かに老いを感じ始める。かつて軽々と登れた山の頂は遠く、神社の石段でも息が上がる。靴下を履くのに時間がかかり、テレビの音が大きくなったと指摘される。家族の名前を間違え、買い物に出たのに財布を忘れる——そんな日常の中に、景司は寂しさを噛みしめる。しかし、やがて彼は過去との折り合いをつけながら、静かな時間を受け入れるようになる。散歩の速度はゆっくりとなり、会話の流れにも慎重になる。かつての記憶がかすみ、昔の友人の名前が出てこなくなる。それでも、景司は孫との語らいや、変わらぬ青空を愛おしく思う。時の流れに逆らわず、人生の終わりを穏やかに迎えようとする。やがて、静けさの中で景司はすべてを受け入れ、最後の歩みを進める。過去を懐かしみながらも、今ある時間を大切にする彼の姿。