あらすじ
十年ぶりに帰省した仁は、亡き父のアトリエで油絵具と松脂の混じった匂いに包まれる。幼い頃、絵描きだった父に憧れ、やがて反発し、そして絵を諦めた自分。アトリエの隅に残された未完の大作、そしてクロッキー帳に描かれていたのは、幼い日の自分の姿だった――。
忘れられない匂い。それは、父との確執の記憶であり、同時に、確かに愛された証だった。
匂いが呼び起こす記憶と向き合いながら、仁は再び絵筆を握る。過去を塗り替えるのではなく、受け入れて、自分自身の絵を描くために。
これは、ひとつの匂いが繋いだ、父と息子の再生の物語。