あらすじ
景司は、幼少期に読んだ『長靴をはいた猫』に憧れ、口先ひとつでのし上がってきた男・景司の人生を描いた物語である。貧しい家に育った景司は、巧みな弁舌と人を煙に巻く話術で商機をつかみ、数々の企画や講演で名を上げた。だがその成功の裏には、多くの虚言と、巻き込まれた人々の犠牲があった。ある晩、景司は「もしすべてが失敗だったら」という夢を見て愕然とする。夢の中で彼は詐欺師として追われ、信じてくれた人々の恨みの声に責められる。目覚めたとき、景司は己の人生を省みる。自分が撒いた嘘の種は、ほんの少しでも誰かの希望になったのか。晩年、ひっそり町を訪れた景司は、過去の講演を覚えていた少女と出会い、「この町、明るくなるかな」という問いに静かにうなずく。そして姿を消す。嘘で築いた人生だったが、その嘘が誰かの灯となったなら、それもまた一つの真実なのかもしれない。