あらすじ
景司は、幼いころから「陰気」と呼ばれ、周囲から疎まれ、避けられてきた。自分の失敗を抱え込み、他人の過ちまで肩代わりしながら、「いなかったことにしてほしい」と願って生きてきた男。だがある日、若者・木下との出会いが、景司の人生を静かに変えてゆく。
相談所で「話を聞く」役目を担うようになった景司は、他人の“声なき声”に耳を傾けるうち、自らの人生の“あったこと”と向き合い始める。やがて彼は、母が遺した手紙を通じて、自分の過去もまた“誰かにとって陽だまりのようなもの”だったことを知る。
語られなかった言葉、忘れられそうな存在、消されそうな影。それらを「なかったことにしない」ため、景司は静かに帳面を綴る。陰気と笑われた男が、人の人生を照らす「小さな光」になるまでの、深く切ない再生の物語。