あらすじ
東京湾の埋立地で、孤独な労働者・景司は偶然、古びた箱を掘り当てる。中には誰にも知られずに眠っていた埋蔵金。名乗る者もおらず、届け出れば行政に没収される。戸惑いながらも景司はその財を誰にも話せず抱えたまま、旅に出ることを決意する。
最初は自分のための贅沢。しかし、使えば使うほど、金の「重み」が心にのしかかる。北へ南へ、人知れず人を助け、名も告げずに町を去る“影の旅人”となった景司は、次第に「贈ること」に生きがいを見出す。
かつての友との再会、過去との邂逅を経て、景司は自らの旅を“埋蔵金を返す旅”と名付けた。名を残すことなく、想いだけを各地に託し、やがて静かに人生の終わりを迎える。
小さな町の灯、小学校の本棚、誰かの思い出の中にだけ生きる男――景司。彼の旅は、金を通して「心を遺す」命の物語となった。