あらすじ
音楽がすべてだった。
ギターを掻き鳴らし、ステージに立ち、メンバーとぶつかって、それでも前を向いて、何度も何度も音にしがみついてきた。
けれど、バンドは終わった。解散した。
それだけで、全部がなくなった気がした。
そんなバンドマン、レイカのもとにやって来たのは、感情の見えない一匹の柴犬。
無愛想で、無表情で、妙に人間くさくて――
「…なにその顔。私より人生悟ってんじゃん」
飼い主である実家の母にあっさり飽きられ、“押し付けられた”その柴犬に、レイカは「サブロー」と名づけた。
ギクシャクしたふたりの関係から始まる、新しい日々。
犬用品すらない部屋、空っぽの冷蔵庫、慣れない共同生活。
戸惑いながらも少しずつ、音楽のない生活と、ひとつの小さな命に向き合っていくレイカ。
拗らせた元バンドマンと、何かを諦めたような顔の柴犬が織りなす、不器用な再出発の物語。