あらすじ
五十四歳の景司は、団地暮らしの清掃員。日々をなんとなくやり過ごす“ていたらくな男”だった。ある日、公園で出会った風変わりな女性・沙織から、塩むすびを手渡される。簡素で優しいその味は、彼の心に何かを灯した。
やがて沙織が姿を消すと、景司はその記憶と靴だけを頼りに日々を歩く。彼女の手がかりを追ううちに、地域の高齢者支援に関わるようになり、“役立たず”だったはずの男が、誰かに必要とされ始める。
再会した沙織と共に、小さな“おむすび屋”を始めた景司。派手さも野望もないが、確かな手ざわりのある日々。二人は塩むすびを通じて、町と、人と、自分の人生とを結び直していく。
派手な成功ではなく、ささやかな誇り。
すり減った靴の先に広がるのは、新しい人生の道だった。