あらすじ
景司は小石川の長屋に暮らす、筋金入りの見栄坊だ。懐は寒いが口は滑らか、借り物だらけの身の上でも、羽織の襟を正して「世のため人のため」と言い張る男である。
そんな彼のもとに、町の揉め事や縁談の口利きなど、様々な厄介事が舞い込む。景司はその都度、軽妙な弁舌と世辞を武器に、何とか切り抜けていくものの、見栄の上塗りが重なって、やがて身動きが取れなくなっていく。
過去に別れたお照との再会をきっかけに、景司は自らの「口だけ人生」に少しずつ変化を覚え始める。長屋の井戸枯れ事件を機に、景司は初めて“人をつなぐ言葉”の力に目覚める。やがて彼の言葉は見栄から誇りへと変わり、人と人とを温かくつなぎ始めるのだった。
笑いと涙、やせ我慢と人情が交錯する、見栄坊の人生逆転譚。