あらすじ
景司、六十七歳。昭和の終わりから令和まで町工場で働き続けた男は、定年退職後も契約社員として工場にしがみついていた。若者たちに煙たがられ、上司には「そろそろ」と促されながらも、景司は「老害は死なず」とうそぶき、現場に立ち続ける。
古い技術、うるさい説教、タブレット嫌い。時代遅れの象徴のような彼が、ある日新人・村上と出会う。口うるさい老工員と、理詰めの若者。対立しながらもやがて奇妙な信頼が芽生え、互いに学び合っていく。
景司は自らの過去の“正しさ”が、今の時代には通用しないことを少しずつ受け入れ、やがて「怒らず、押しつけず、静かに教える」ことを覚える。最終章では、自らの引き際を悟った景司が、黙って職場を去っていく。
拍手も涙もなく、けれど確かに人の心に何かを残して。
それが、ひとりの老工員の“卒業”であった。