あらすじ
四国の山中をバイクで旅していた景司は、杉林に囲まれた国道沿いにぽつんと佇む一軒の喫茶店「つゆくさ」に立ち寄る。周囲に人家も店もない中、その喫茶店だけがぽつりと存在していた。中には小柄な少女が給仕をしており、無駄のない静かな働きぶりに、景司は言い知れぬ安らぎを覚える。都会のような過剰な接客もなく、作り笑いもなく、ただ静かに“その場に居る”少女の姿に、景司は心のどこかを揺さぶられる。劇的な出来事があったわけでも、言葉を交わしたわけでもない。だが旅の途中で出会った「忘れがたい風景」として、少女の給仕と山の静けさは、景司の記憶に深く刻まれていく。旅人の心に静かに差し込む、ただ一つの午後の光。