あらすじ
景司は、幼い頃から神仏に手を合わせることを習慣として育った。成績や受験、昇進試験、何かあるたびに祈った。「どうか、うまくいきますように。」、願いは、彼の生き方の根だった。
ある日、映画『宮本武蔵』で聞いた言葉に景司は衝撃を受ける。「神仏を尊びて、神仏を頼らず。」、武蔵は祈らないで闘っていた。
祈ることは正しいのか?祈るだけで進めるのか?ご利益だけを求める信仰は、自分を育てるのか?景司は静かに問い始める。
祈らずとも、自分で動くこと。敬いながらも頼らず、自らの足で歩くこと。それを景司は実践に移す。「見ててください。」、神仏に願うより、自ら努める姿勢へと変わっていく。
やがて景司の拝まぬ姿勢が、周囲に静かに染み出す。背中で示す信仰、言葉なき敬意が、町の人々の暮らしに灯る。
そして老いた景司は振り返る。「武蔵にはなれんかった。でも誰かの祈りになれたかもしれん。」、祈る青年が、祈りを灯す者になるまでの静かな思想譚。