あらすじ
四国の山間に育った二人の幼馴染、言葉で人を動かす策士崇と、汗で物を動かす山師景司。性格も手法も異なる彼らは、少年期の競演をきっかけに、十五年の時を経て異なる道を選ぶ。崇は町で交渉の才を磨き、景司は峠道で誠実な背中を積み重ねる。
再会した彼らは、村の境の土地争いや道づくり、選挙などさまざまな場面で火花を散らしながらも、お互いを支え合うことばと行いの二重奏を紡いでゆく。崇の策は札として、景司の汗は土として、人の暮らしに静かに滲んでいった。
村政の揺れ、工場誘致をめぐる最後の決断。言葉にならぬ声、札に書けぬ気配。その中でふたりは沈黙と誠実に答えを見出し、老境を迎える頃には、若者の背をそっと押す存在となっていた。
策と汗。風と土。言葉と沈黙。 坂を登ってはすれ違い、また並ぶ、二人の半生が描くのは、誰もが背負う人の道。