あらすじ
高校三年生の一樹は、ある日突然世界中の鏡が人の背中、すなわち“うしろ姿”だけを映すようになった「全地球規模鏡面反転現象」を体験する。元々うしろ姿に強く惹かれていた彼は恋人・麻衣から気味悪がられ、やがて別れを告げられる。しかし一樹は麻衣のうしろ姿の美しさに執着し続けた。
やがて一樹は、麻衣のうしろ姿が彼女自身から物理的に剥がれ、謎の裏返しの建物の中に保存されている光景に遭遇する。その建物には他にも多くの「うしろ姿」が浮かび、彼らは“うしろ姿に魅入られた人間”の剥離した一部だと知る。一樹自身も背中が熱く光り始め、自らのうしろ姿を失う危機に直面する。
なおも麻衣のうしろ姿を取り戻そうと建物に飛び込むと、そこで裏側世界と現実世界が交錯を始め、完全な人間と失われた「うしろ姿」たちの融合が始まる。一樹は麻衣のうしろ姿と対話し、「人は前も後ろも含めてひとつの存在であり、愛もまたその全てを受け入れることなのだ」と悟る。
最終的に二人は再び完全な存在となり、日常へ戻る。だが一樹はこの奇妙な体験を小説に綴り、“愛するとは、その人の全て――見える部分も見えない部分も、前も後ろも――を受け入れること”だと改めて実感するのだった。