あらすじ
「知ってる? 花にいい音楽を聴かせるとよく育つんだって」
ぽろぽろぽん。
名取くんが抱えたアコースティックギターの弦を震わせると、辺り一面に咲いている水色の小さな花たちが楽しそうに左右に揺れた。
彼の音はいつもとても優しくて、目をつむるとそのまま眠ってしまいそうなほどの安心感がある。
「ご依頼の曲はもう少し盛り上がるやつにしようかな」
「あ、考えてくれてたんだ」
憶えててくれたんだ、とそれだけで私は嬉しくなって空を見上げる。
今ならあの白い雲を突き抜けて青空にまで手が届きそうだ。
「夏までには作るから」
「急がなくていいからね」
「そりゃどうも」
お礼を言われて少しばつが悪い。
私はただ一日でも長く、彼の音を聴いていたいだけなのだから。