あらすじ
白石澪は、学校では透明な存在として過ごしている。
美術部には籍だけを置き、放課後は誰もいない図書室の隅や屋上でスケッチブックに感情を描き続けるだけの日々。
しかしある日、転校してきた夏目くんに絵を見られてしまう。
「――君の描く世界は、誰より鮮やかだね」
その一言が、凍っていた心を少しだけ溶かしていく。
夏目は澪にだけ自然に話しかけ、少しずつ距離を縮めてくる。
二人は放課後に一緒に絵を描いたり、展示を見に行くようになる。
しかし、澪は「自分は“透明な存在”でいる方が安全だ」と心に壁を作り続ける。
一方、夏目は「半年後、親の仕事の都合でまた転校する」と明かす。
「だから、あと半年しかここにはいない」
そんな期限付きの関係に、澪は戸惑いながらも心を惹かれていく。
澪の描いた絵が、偶然美術部の文化祭展示で脚光を浴びる。
「白石さんがあんな絵を描くなんて」――
注目を集めたことで、今まで無視してきたクラスメイトたちの態度が変わり始めるが、それは決して好意的なものだけではなかった。
また、澪は夏目が「かつていじめられていた過去を持つ」ことを知り、彼が自分を見つけた理由も明らかになる。
そんな中、澪はついに自分の気持ちを自覚するも、「あなたの人生の邪魔になりたくない」と身を引こうとする。
だが夏目は言う――
「君に出会ってからのこの半年が、ぼくの人生を変えたんだ」
転校の日が近づく。澪は学校の外壁に大きな壁画を描くことを決意した。
「“色”をくれた人が、確かにここにいた証を残したい」
別れの日、夏目はその絵の前に現れ、最後にこう告げる。
「この絵がある限り、ぼくは何度でも君に会いに戻ってくる」
そうして澪は、自分の人生のキャンバスに、初めて自分の意志で“色”を塗る。
告白は、別れと再会の狭間で交わされる。
切なくて美しい文体の青春恋愛小説。