あらすじ
高校生の景司は、過疎の町に暮らす無口な少年。祖父に連れられて通った山道や、古びた神社の石段を歩くなか、彼は“昔のことば”に惹かれてゆく。学校の国語教師に導かれ、やがて景司は防人の歌、千年以上前の和歌に出会い、衝撃を受ける。「この歌は、自分の中にある何かを言い当てている。」と。書庫で和歌に没頭しながら、景司は知らず古代の人々と心を通わせていく。
やがて、町の博物館に招かれた景司は、自ら詠んだ防人歌が「魂の記憶」として千年を超えて伝わったかのようだと語られる。かつて防人の道が通った土地、声にならぬ声を遺し、消えた者たち。その“言葉”を、景司は現代に呼び戻す。
孤独で無口だった少年が、古代の言葉を通じて自らの心に出会い、人と歴史とを繋ぐ橋渡し役となる、これは、千年の時を超えて交わされた「心と言葉の手紙」である。