あらすじ
眠れぬ深夜、72歳の筆者は偶然テレビで小津安二郎の遺作『秋刀魚の味』を観る。かつて亡き妻と共に小津作品に触れた記憶がよみがえる中、娘を嫁がせる父親の葛藤と孤独に、自身の境遇が重なる。現役にこだわり続ける理由が、実は一人になることへの恐れだったと気づく。映画を通して「本当に愛しているからこそ、手放す」ことの意味や、時代に取り残される感覚、日常の何気ない会話の尊さを再認識する。そして、娘の言葉や亡き妻との思い出を胸に、変化を受け入れながらも、静かに前を向いて生きていこうとする決意が芽生える。小津作品の静謐な世界は、筆者にとって人生の問いに対する一つの答えとなり、深夜のひとときが心の転機となった。