あらすじ
許されるのはこの程度だ。左頬に幾筋も流れる涙を、指でなぞり掬う程。
薫は拒むこともなく、まだ私を見詰めたまま。そして瞳は絶えず潤む。
今ひと声で、箍が外れそうだ。
だから願う。私を、呼ばないでくれ。
第二皇子が春宮宣下を受ける時、待ち侘びたかのように平穏な世の歯車が狂い始める。
謀叛を企むは第一皇子を担ぐ宮家の兄弟、春宮暗殺の凶刃を振るうは圧倒的力を有する僧侶、傾国の美姫・常春憑きの帰還、傍観の鬼が明かす帝の過去、闇に葬られた双子の片割れ、繰返す大陸との戦。
戸惑いながら、近づいては離れ、また惹かれる春宮・志貴と、男装の従者・薫、そして桜の妖・綏靖。
唄うように舞うようにいては何も護れない。
心のまま欲望のままに、剥き出しの牙で運命に抗う。