あらすじ
野口トレーディング営業課の課長・松本景司、五十二歳。
名ばかりの中間管理職として、部下の尻ぬぐいに明け暮れる日々を過ごしていた。ある日、新人の清水真弓が、見積もりと納期の重大なミスを打ち明けてくる。景司はそれを自らの責任として被り、社内評価を一身に下げる道を選ぶ。
火中の栗を拾うような決断だが、それは若者の成長を信じた、景司なりの管理職の矜持だった。やがて真弓はその背中から多くを学び、成長していく。そしてある日、彼女が次期課長に選ばれる日が訪れる。
「わしのことは忘れてええ。」と言い残し、ひっそりと去る景司の背中には、派手さのない仕事人の魂がにじんでいた。
失敗も、名誉も、肩書きも超えて、人が人を支える温かさを描く、ちいさな悲喜劇。