あらすじ

松本景司は、山村の貧しい青年。 幼いころから世話になった呉服屋の娘・お咲にひそかに想いを寄せていたが、彼女はある春の日、何も告げず村を出た。 失意のなか、景司は陰膳を始める。 夕餉のたび、もうひとりのための膳を並べ、手を合わせる。 風の声、雨の音に語りかけるように、七年ものあいだ、ひとり続けた膳。 それは滑稽にも映り、村人たちの嘲りも受けたが、景司は微笑みひとつで受け流した。 そしてある日、お咲は帰ってくる。 すべてを失い、行き場をなくし、ただ「膳のある場所」へ戻ってきたのだった。 ふたりは静かな日々を積み重ね、やがて夫婦となり、誰のものでもない慎ましくも温かな暮らしを築いていく。 やがて、お咲が逝き、景司は再びひとり膳を据える。 だがその膳はもう「不在のため」ではなかった。 いつかまた来る誰かのため、風の向こうにいる誰かのため そうして膳は、村人の間に受け継がれ、やがて「誰かの心に箸を置く」場となっていく。

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エブリスタ
エブリスタ2025/07/31
  • 現在の作品景司の陰膳