あらすじ
台所シリーズ・第3部(全5部)『台所がせかいをかえる』(全11話)
ささやかな日常の断片が、過去と未来をつなぐときがある。
ときに、それは、あなたの“記憶の予備”すら超えてゆくのかもしれない。
始まりは、長い旅を終えた伸子との再会。
札幌の地下道で、横浜・妙蓮寺の井戸の水の音が聴こえた。
それはまるで、日本の水道インフラの始まりのように、音を立てて流れ出した。
妙蓮寺の井戸は、今日もそこにあるのだろうか。
響香をそこへと誘うような、一本の電話。
父のいない実家。
そこに置かれていた“非公開”と書かれた封筒。
中には、モノクロの子どもたちの写真——7、8人の真顔。
そして、父が遺した小さな冊子『ああ、青春の』。
そこには、かすかにアラビアの風が吹いていた。
それを手にした瞬間、彼女は「過去と未来」のちょうど真ん中に立っていた。
札幌・チカホのベンチから、世界へ。日常は、ペルシャ湾の果てまでもつながっていた。
そして、帰路に届いた一通のメール。
——それは、いったい誰からだったのか?