あらすじ
イリア、29歳。元男娼。
彼の人生は、物心ついた時から地獄だった。戦争孤児として生まれ、奴隷として売られ、性の匂いが染みつくまで数えきれない男女の欲望を受け入れてきた。心はとうに死に、ただ呼吸をするだけの肉人形と化した彼を、大陸を支配するピノ王国の賢帝ピヨドルフが競り落とす。王宮という新たな檻で、イリアは王の性的玩具として、死と隣り合わせの屈辱的な日々を送っていた。
そんな絶望の底で、彼は二つの運命と出会う。一つは、王の娘であり、神童と謳われる王女ミア。彼女はイリアの中に眠る才気を見出し、純粋で歪んだ執着を向ける。そしてもう一つが、宇宙から来た謎の機械生命体、金魚のカロー。彼は、退屈しのぎにイリアに「力」を与えた。それは、世界を根底から覆す、科学の知識と凶悪な兵器だった。
王の苛烈な虐待に耐えかねたイリアは、カローの力で王を殺害。その直後、父の死を喜ぶミアによって、彼は新たな所有者を得る。女王となったミアは、イリアに爆弾付きの首輪をはめ、彼女だけの所有物とした。ミアとの日々は、王のそれよりも遥かに苛烈な調教と暴力に満ちていたが、不思議なことに、イリアはその歪んだ激情の中に、初めて「愛」を見出し、彼女に恋をする。
やがて、カローが遺した禁書『秘密道具の作り方』がミアの手に渡ると、彼女の野心は世界へと向けられる。魔法と科学を融合させた圧倒的な軍事力で、ピノ王国は瞬く間に世界を征服。その過程で、原子力魔法爆弾によって魔法都市クルルを消滅させるなど、非道の限りを尽くした。イリアは、愛するミアの共犯者として、その罪を共に背負う。
だが、その歪な愛と支配の上に築かれた平和は、二人の子供、ステラとピトスの心に深い闇を落としていた。両親の倒錯した関係と、その支配の裏にある多くの犠牲を知ったステラは、憎しみを募らせ、ついに反乱を起こす。彼女は母ミアを殺害し、父であるイリアにも刃を向けた。イリアもまた、娘の手にかかり命を落とす。
しかし、カローの力によってイリアはコンティニューする。だが、時を戻すことはできず、世界はミアの亡霊である『ミアAI』と、ステラが率いる反乱組織『ドメイ』との全面戦争に突入。再び全てを失ったイリアは、宇宙の理を司る「金魚狩り」の存在や、カローの悲しい過去と、この世界が無限ループする牢獄であるという真実を知る。そして、最後の戦いで、彼はカローから「最後のコンティニュー」の力を託され、過去へと戻る機会を得る。
イリアが戻ったのは、クルルへの爆撃が行われる数日前の世界。今度こそ、彼は未来を知る者として、悲劇を回避するために行動を開始する。ミアの暴走を力で止め、ステラの心に寄り添い、憎しみではない形で彼女を導く。やがて、宇宙からの脅威「金魚狩り」が襲来するも、イリアは愛する家族や仲間たちとの絆の力で、コンティニューに頼ることなく、奇跡的な勝利を収める。
戦いの後、世界は新たな時代を迎えた。子供たちは成長し、それぞれの家庭を築く。イリアとミアの関係は相変わらず歪なままだが、そこには確かな信頼と深い愛情があった。銀河規模にまで発展したピノ王国を舞台に、イリアは愛する者たちと共に、コンティニューの効かない、一度きりの未来を歩んでいく。
これは、絶望の底にいた一人の奴隷が、世界と運命に抗い、歪な愛の果てに、かけがえのない家族と共に本当の幸福を掴むまでの、壮大な物語である。