あらすじ
私は、王家の第三王女として、名ばかりの「公務」に辟易していた。母である女王も、姉である第一王女も、都合よく体調を崩しては、面倒な仕事を私に押し付けてくる。心身ともに疲弊しきった私は、まるで張り子の人形のように笑顔を顔に貼り付け、長時間揺れる馬車の中で愚痴をこぼすことしかできなかった。同行する女性護衛のシルフィアは、多くを語らないが、その表情の微かな変化に、私への同情がにじんでいるのを感じていた。
私が国王と女王、そして姉が、この過酷な公務を意図的に私に押し付けていることに気づいた時、私の堪忍袋の緒はついに切れた。
ある朝、食卓でついに私は衝動的に叫んでしまったのだ。「もう、限界です!私はここから出て行きます!」と。家族は当然のごとく反対し、激しい言い合いになったけれど、父である国王陛下は、私の訴えに一見理解を示し、「地方視察」という名の旅を提案してくれた。私はその甘い言葉に飛びつき、一縷の希望を見出した。
だが、その裏には巧妙な罠が隠されていたのだ。旅の詳細が記された極秘の書類を見た時、私は愕然とした。それは地方視察などではなく、私に婿候補がいる他国を巡る、お婿さん探しツアーだったのだ!国王陛下が私を政略結婚の道具にしようとしていると知り、疲労困憊だったはずの体には、新たな怒りの炎が灯った。
しかも、旅には一筋縄ではいかない面々ばかりが同行させられた。口は悪いが腕は立つ護衛騎士ガレス、滅多に口を開かないが何でもこなす無口な侍女セレン、そして、かつて「王国の賢者」と呼ばれた奇妙な言動の老執事アベル。彼らとの旅は、最初から波乱含みだった。ま、当然っちゃ当然よね。