あらすじ
春、入学式の朝。
新しい制服に身を包みながら、少年は夢を持っていた。
――音楽で、誰かの心を癒したい。
そんな彼が、満員電車のなかでふと目にしたのは、
長い黒髪を揺らし、伏せたまなざしで座る、ひとりの少女だった。
彼女の前に立つ女性に、そっと席を譲ったその姿は、
ざわめく車内のなかで、そっと心に沁みこんだ。
彼女は、誰にも言えない秘密を抱えていた。
それは、自分の未来に関わる、大切なこと。
音楽で誰かの心を癒したいと願った少年と、
心の扉を静かに閉ざしていた少女。
交わるはずのなかったふたりが、三年目の春、同じ教室で出会う。
彼の奏でる音楽が、彼女の止まっていた時間にそっと触れ、
閉じかけていた想いが、静かに動き始める。
それは、やさしさと痛みを抱えたまま綴られていく、
音のない、透明な夢のような青春の記憶。
静かに、けれど深く胸を打つラブストーリー。
その出会いは、たしかに、未来を変えた。