あらすじ
長編クローズドサークル型ミステリー
舞台は、外界と遮断された山中の館。
登場人物たちは皆、ある共通の過去を持つ。
そして、連続殺人が始まる。
主要登場人物:
沖田 静(おきた しずか)
高校生。冷静沈着な知性と、内面に秘めた信念と葛藤を持つ。過去に一度だけ、この館を訪れている。
神野 創司(じんの そうじ)
理知的な若手作家。館の主の親戚として招かれた。皮肉屋で懐疑主義者。
牧島 航(まきしま わたる)
快活な大学生。沖田の旧友。明るく振る舞っているが、何かを隠している様子。
三条 鈴音(さんじょう すずね)
館の主の娘。病弱で屋敷の中から外に出ない。幻想的な雰囲気を持つ。
伊東 葉月(いとう はづき)
屋敷に仕える若いメイド。無口で謎多き存在。
館の主(名は後述)
一切の連絡を絶ち、長年世間から姿を消していた元心理学教授。
導入(プロローグより抜粋):
霧深き山奥、電波も途絶えた断崖の先に建つ石造りの館。
その日、沖田静は一通の手紙に導かれ、再びこの地を訪れた。
「また、この館に来ることになるとはね……」
薄く笑みを浮かべるその瞳には、かつての出来事の影が色濃く残っていた。
招待されたはずの館の主は姿を見せず、集められた6人の男女の間に、かつて共有した“ある事件”の影が忍び寄る。
そして嵐の夜、第一の殺人が起きる――。
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🔖【プロローグ】沈黙の招待状
「……また、この館に来ることになるとはね」
濃霧の向こうに佇む石造りの館を見上げ、沖田静は微かに笑った。
滑らかな指先が、コートの内ポケットに差し込まれた一枚の手紙をなぞる。
色褪せた封蝋には、古風な“心理学の象徴”であるヘルメスの杖の紋章。
差出人は、十年前に消息を絶った**「館の主」**――今や伝説のような元心理学教授、**九条湛(くじょう たたえ)**であった。
沖田がこの地を最後に訪れたのは、まだ10歳の頃だった。
その時の記憶は断片的だが、彼の記憶の底には、ある“光景”が今もなお鮮明に焼きついている。
――古い時計の音、書斎に響いた鋭い叫び声、血のにおい。
招待状には、ただ一言、こう記されていた。
『再び、真実と向き合う時が来た。』
🕰️ 第一章:集う影たち
登場人物紹介(章中)
◉ 神野 創司(じんの そうじ)
若手作家。館の主の親戚として招かれた。皮肉屋で、理屈にこだわる懐疑主義者。
「死者が語る? それは、君のロマンチズムというやつかね、静くん」
◉ 牧島 航(まきしま わたる)
快活な大学生で、沖田の旧友。明るく振る舞っているが、時折、遠くを見つめるような目をする。
「……覚えてないの? 十年前、あのとき君が……いや、やっぱ、何でもない」
◉ 三条 鈴音(さんじょう すずね)
病弱な少女。館の主の娘で、幽霊のように静かな佇まいを持つ。屋敷の2階から外に出ない。
「ここでは、時々、声がするの。……パパの声、聞いたことがある?」
◉ 伊東 葉月(いとう はづき)
屋敷に仕える若いメイド。無口で表情をほとんど変えない。過去の素性は不明。
「……何も、知らないほうが、いいこともあります」
◉ 館の主・九条 湛(くじょう たたえ)
姿を現さない。招待状の差出人であり、かつては著名な心理学者。十年前、突如消息を絶った。
嵐の夜。館に集められた6人。
電波は途絶え、外界との唯一の連絡手段だった有線電話も、館の一室で破壊されていた。
そして、その晩――
📍第一の殺人が発覚する。
被害者は、神野創司。
書斎で倒れていた。扉は内側から鍵がかかっており、窓には内側から鉄格子が。
完璧な密室での、銃による頭部への一発。
沖田静は、硝子越しの霧に沈む森を見やりながら、静かに呟いた。
「――美しいほどに閉じている。でも、これでは“詰め将棋”にすらならないね。ここには、“詰める者”がまだ姿を現していない」