あらすじ

東京都墨田区――国技館。表向きは伝統の象徴、力士たちの神聖なる舞台。だがその地下深く、一般人の立ち入りが禁じられた区域には、巨大な焼き鳥工場が存在する。 その構造は、まるで古代ローマのコロッセオ。中央に巨大な回転式グリルが設置され、まわりを囲むように焼き師、タレ師、監視員たちが配置されていた。彼らは無言で焼き鳥を焼く。ただひたすら、焼く、タレにくぐらせる、焼く、またタレに沈める――この四連工程を繰り返す。 その焼き鳥は冷えても美味い。逆に熱々だと凡庸に感じる。 それこそが、「国技館焼き鳥」最大の秘密だ。 だが、この工場の本当の核心は――その下にある。 第二章:磁場の支配者たち 焼き鳥工場の真上、土俵の中心の真下には、関係者でも知る者の少ないリングが存在する。そこが「磁場闘技場(マグ・ドーム)」。地面は鋼鉄製、電磁コイルによって細かく制御される。ここで戦うのが、“地下格闘士(グランドファイター)“と呼ばれる男たちだ。 主人公・鴇田(ときた)カシワ。40歳。元プロボクサー。 かつては「津軽の雷」と呼ばれた男も、今は見る影もない。顔には無数の古傷、左膝は古い怪我で曲がったまま。両手首に埋め込まれた磁力制御装置が、雨の日には疼く。 カシワは毎晩、青森の母に電話をかける。 「来月には帰るからな、お母さん」 嘘だった。組織の借金は1500万。簡単に足を洗えるわけがない。

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カクヨム
カクヨム2025/07/19
  • 現在の作品国技館焼き鳥、闇の格闘技