あらすじ
階段の下にあるのは、記憶と恋が蒸気に溶けた喫茶店。
通学路の途中で、
“月詠紅子”にしか見えない階段を見つけた。
降りていったその先には、蒸気と紅いネオンに包まれた、どこか懐かしい喫茶店があった。
──「蒸気紅茶館ノスタルジア」
そこでは、記憶を宿す紅茶が静かに香り、
金の義手を持つ無口なマスターが、一杯ずつ、心に触れるように紅茶を淹れてくれる。
やがて紅子は、“誰かに会いたい”という気持ちだけを思い出す。
けれどその「誰か」は、夢の中に出てきても、顔も名前も思い出せない。
喫茶店の片隅に残る、かつての来訪者「ペイル」という名。
紅子は、街に散らばった記憶を拾い集めるように、その足跡をたどり始める──
そしてやがて知る。
自分が“この世界に現れた理由”と、“紅茶の最後の香り”の正体を。
これは、香りだけが残った恋と、
名前すら忘れた少女の、
一杯の紅茶から始まる記憶の物語。